【第7回:オプション入門編】オプション取引の基本用語&謎の暗号「グリークス」&「IV」を解説

理論

第2回にオプションについて専門用語は使わずに簡単に説明しましたが、今後記事を書いていく上では専門用語を使う機会が増えていくと思いますので、今回はその専門用語について簡単に解説していこうと思います。

また併せてオプション価格を決定している「グリークス」と「IV」についてもここで解説しておこうと思います。

まずはここから!オプション取引の超基本ワード

まずは、全ての土台となる「5つの言葉」からマスターしましょう。

コール・オプション (Call Option)

株を買う権利です。

第2回で説明した株価の上昇に備える保険になります。

プット・オプション (Put Option)

株を売る権利です。

第2回で説明した株価の下落に備える保険になります。

プレミアム (Premium)

第2回で説明したオプションの売買で発生する保険料のことです。

権利行使価格 (Strike Price)

オプションで「株をあらかじめ〇〇円で買う(売る)」と決めた約束の金額です。

満期日 (Expiration Date)

オプションの約束を行使できる最終期限日(取引最終日)になります。

商品によって満期は様々ですが、基本的に1ヶ月ごとに満期がくる「マンスリー・オプション」が一番取引量が多いです。

マンスリー・オプションの満期日は、アメリカ株だと「第3金曜日」、日本株(個別株オプション)だと「第2金曜日の前営業日(通常は木曜日)」となっているものが大半です。 (銘柄や商品によってはタイミングが違ったりするので、事前の確認が必要です)

満期決済の基準価格(SQ値・引け値)

満期日の時点で、オプションが「利益が出る状態」になっているかを判定するための基準価格です。

満期時点で利益が出る状態となっているオプションは、この価格をもとに、自動で権利行使(買い取りや売却)の処理が行われます。

基準となる価格は、取引する商品によって以下のように決まるものが大半です。(銘柄や商品によってはタイミングが違ったりするので、事前の確認が必要です)

  • 日経平均などの「指数」オプションの場合: 満期日(第2金曜日)の朝の「寄り付き値」をもとに計算される「SQ(特別清算指数)」という特別な価格が基準になります。
  • 個別株オプション(日本株・米国株)の場合: 満期日の「引け値(終値)」がそのまま基準となります。

どっちの立場?「買い手」と「売り手」の違い

オプションに関係なく、株、債券、FXなどでもよく使われる用語ですが、買うことをロング、売ることをショートと言います。

ロング (買い手)

オプションの場合はプレミアムを払って権利を買う立場になります。

ショート (売り手)

オプションの場合はプレミアムをもらう代わりに、権利を売る立場になります。

今のオプションの状態を表す3つの用語 (マネーネス)

今の株価と、権利行使価格を比べて、そのオプションが今どんな状態かを表す言葉です。

イン・ザ・マネー (ITM)

権利行使された際に「利益が出る」状態になります。

・コールオプションの場合:権利行使価格 < 現在の株価

・プットオプションの場合:権利行使価格 > 現在の株価

アット・ザ・マネー (ATM)

今の価格と約束の価格が「ぴったり同じ」の状態になります。

権利行使価格 = 現在の株価

アウト・オブ・ザ・マネー (OTM)

権利行使されたら「損をする」状態になります。つまり、権利行使されることがないオプションです。

・コールオプションの場合:権利行使価格 > 現在の株価

・プットオプションの場合:権利行使価格 < 現在の株価

余談:オプションを買う際に多いのはATM、OTMのオプションを買ってITMになることを期待する取引であることから、建玉数が多いのもATM、OTMの2つになります。

一方でITMのオプションは、すでに本質的価値(株価と権利行使価格の差額)が含まれていて既にプレミアムが高く、建玉数が少なかったりします。
※建玉数が少ないだけで「ITMになってしまったオプションの損切りやロールオーバーのために買い戻す」、「既にITMのリープス(満期まで1年以上あるコールオプション)を買って値上がりを期待する」などの取引があるため、取引が全く成立しないわけではありません。

オプションの価格ってどうやって決まるの?「ブラック・ショールズ・モデル」

ここまで読んで、「そもそも、オプション(権利)の適正な値段(プレミアム)って、誰がどうやって決めているの?」と疑問に思った方もいるかもしれません。

その答えが、「ブラック・ショールズ・モデル」という計算式です。

むずかしい数式は無視してOK!

実際の数式はかなり複雑なので、ここでは割愛してイメージだけの説明に留めます。

実際に取引を行う上で特に大切になるのは、このモデルに「6つのデータ」を入れると、「オプション価格の理論値」を弾き出してくれる、という仕組みを知ることです。

その6つのデータは以下になります。

  1. 現在の株価 (原資産価格)
  2. 権利行使価格 (Strike Price)
  3. 満期までの残り時間 (セータに関係)※セータは本記事の後半で簡単に説明
  4. 株価の予想変動率 (インプライド・ボラティリティに関係)※インプライド・ボラティリティは本記事の後半で簡単に説明
  5. 配当率 (オプションを売買している株の配当率。今回の記事では説明を割愛)
  6. 金利 (世の中の金利水準。今回の記事では説明を割愛)

保険の「掛け金」を決める仕組みと同じ!

イメージが湧かない方は、「自動車保険の掛け金(保険料)」を思い出してください。

  • 「事故を起こしやすい若いドライバー (=インプライド・ボラティリティが高い)」
  • 「保険の期間が3年と長い (=満期までの残り時間が長い)」

こうなると、保険会社が保険を払う可能性が高くなるので、保険料(プレミアム)は高くなりますよね。

ブラック・ショールズ・モデルは、まさにこれと同じことを株の世界でやっているだけです。「これだけ条件が揃っているなら、イン・ザ・マネーになる可能性はこれくらいだから、この権利のプレミアムは〇〇円が妥当だよね!」と導き出している形となります。

そして、このモデルを語る上で必要となるのが、次に解説するデルタやガンマといった「グリークス」と「IV」になります!

4. 中級者への扉!価格を動かす5つの黒幕 (グリークス&IV)

ここからが本番です。!「株価が動いていないのに、なぜかオプションの価格が変わった…」という謎を解き明かす指標です。

デルタ (Delta)

意味合いとしては以下の2つの意味を両方持っています。

株価が1円動いたとき、オプション価格が何円動くか

 →デルタが「0.5」なら、株価が100円上がると、オプションのプレミアムは50円上がります。

②株価が満期日にイン・ザ・マネーになっている確率

 →デルタが「0.5」なら、満期日に50%の確率でイン・ザ・マネーになります。※あくまで確率論から計算される権利行使される確率の目安でしかありません。

ガンマ (Gamma)

株価が動いたときに、デルタがどれだけパワーアップするかを表します。

ガンマが「0.1」なら、株価が100円上がると、デルタが0.1上がります。

ガンマが大きいと、予想が当たったときにのデルタの上がり幅も増えるため、利益が加速度的に増えやすくなります。

よく聞くガンマ・スクイーズもこのガンマの影響で起こる現象です。(株価が急上昇することで、オプション売っていた人たちが「オプションの買い戻し」や「先物の買い」などによるリスクヘッジを急ぎ、そのリスクヘッジの取引がさらに株価を押し上げる現象のことです)

IV (インプライド・ボラティリティ)

市場の参加者が予想する「将来の期待度・恐怖度(株価の予想変動率)」のことです。

決算発表前、注目指標の発表前などのイベント前はIVが上昇してオプションが高くなり、イベントが終わるとIVが低下してオプション価格が下がったりします。

つまり、IVが高い状況は、みんながリスクに備えていてオプションの買い需要が多いときであり、プレミアムが高くなります。

ベガ (Vega)

市場の予想変動率(IV)が1%変わったとき、価格が何円動くかを表します。

ベガが50ならIVが1%上がるとプレミアムが50円上がります。

セータ (Theta)

時間の経過とともに、1日あたり何円ずつ価値が減っていくかを表します。

オプションは満期日までに株価が動くかもという期待による価値(時間価値)が含まれており、その価値は日々減っていきます。

買い手にとっては「毎日引かれる保険料のコスト」、売り手にとっては「毎日入る保険料による収入」という位置づけになります。

5. 結局、何が起きたらどうなるの?(まとめ一覧表)

これらをギュッとまとめたのが、以下の表です。

あなたの行動株価が激しく動くと?
(デルタ、ガンマの力)
パニックになると?
(ベガ、IVの力)
時間が経過すると?
(セータの力)
オプションを「買う」有利! 大きな利益の可能性有利! オプションの価値が上がる不利… 毎日価値が目減りする
オプションを「売る」不利… 想定外の株価変動による評価損リスク不利… オプションの買い戻し価格が高くなる有利! オプションの買い戻し価格が下がる

余談:上の表では完全に独立した要素のように記載していますが、実はデルタ、ベガ、セータ、ガンマ、IVは密接に関係しあっており、一つのパラメータが動けば他のパラメータも値が動きます。

まとめ:オプションは仕組みが面白い保険

今回オプションの用語や、ちょっと難しそうなギリシャ文字(グリークス)について簡単に説明しました。

内容が理解できない部分もあったかもしれませんが、一度にすべてを暗記する必要はまったくありません。まずは、

5つの基本用語:コール、プット、プレミアム、権利行使価格、満期日

2つの立場: 「買い手 (ロング)」 、「売り手 (ショート)」

3つのマネーネス:イン・ザ・マネー、アット・ザ・マネー、アウト・オブ・ザ・マネー

5つの価格の黒幕:「デルタ」、「ガンマ」、「IV」、「ベガ」、「セータ」

を抑えていただければと思います。

今後はグリークスとIVの話の深堀りを行い、これらをどう味方につけてホイール戦略を行うかを解説できればと考えています。

🚨 【次回予告】ホイール戦略の味方「セータ」の仕組みを解き明かす

第7回では、オプション取引の基本用語や「グリークス」「IV」という謎の暗号の全体像について解説しました。

「いろんな指標があることは分かったけれど、具体的にホイール戦略を回す上でどうかかわってくるの?」

そんな疑問に答えるべく、次回はオプションを動かす指標の一つである「セータ」について解説します!

セータはホイール戦略においては味方であり、仕組みを理解すればオプションの売り手がどうやって効率よく利益を拾っていくことができるかを理解できると思います。お楽しみに!

▼ 次回記事はこちら

【第8回:ホイール戦略では味方】オプションの時間価値を削る「セータ」の仕組み
本記事ではホイール戦略を行う上で味方となるセータの特徴を解説します。オプションの売り手にとっての味方となるセータの特徴を正しく理解し、無駄なくホイール戦略におけるターバイとカバコを回すようにしましょう。

ホイール戦略を体系的に学びたい・実践したい方へ

戦略の全体像を知りたい方はこちら

ホイール戦略を効率よく実践するための知識を、STEP順にまとめた「学習ロードマップ」を作成しました。
[>>ホイール戦略・学習ロードマップをチェックする]

ホイール戦略:学習ロードマップ
これからオプションやホイール戦略の勉強をしたい人向けにこれまでの記事で解説した内容を簡単にまとめた記事の一覧になります。初心者はまずこの記事からチェックすることをオススメします。

取引を始めるための準備はこちら

ホイール戦略を始めるには、オプション取引が可能な証券口座が必要です。
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【第15回:証券会社のご紹介】Moneybullがホイール戦略と親和性が高い「ウィブル証券(Webull)」を紹介
本記事では私が使っているウィブル証券(Webull)のMoneybullという仕組みが、米国株オプションの「ホイール戦略」と親和性が高いと感じたため、その特徴と注意点について解説します。

【ご注意】
当ブログで紹介しているホイール戦略やオプション取引は、高いリスクを伴う金融取引です。利益を保証するものではなく、元本を割り込む、またはそれ以上の損失が発生する可能性があります。取引の際はリスクを十分にご理解の上、自己責任で行ってください。

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