【第8回:ホイール戦略では味方】オプションの時間価値を削る「セータ」の仕組み

理論

第7回の記事でオプションの用語説明と、オプション価格を決める要素について簡単に説明しました。

今回からは、オプション価格を決める要素がホイール戦略にどう関わってくるかを解説していこうと思います。

まず始めに解説するのは、ホイール戦略では味方となるセータになります。

セータ(Theta)とは?=1日経つごとに自動で削られる「時間価値」

セータを一言でいうと、「株価などが全く動かなかったときに、1日経過するごとにオプション価値(プレミアム)が何円減るか」を表した指標です。

オプションの価格には、満期までに「暴騰(暴落)が起きるかもしれない」という期待値(=時間価値)が含まれています。この時間価値は、満期が近づくにつれて目減りしていきます。

仮に、あるオプションの価格が300円、セータが「5」だとします。

株価が1円も動かず、ニュースも何もなかった場合、翌朝目が覚めるとオプションの価値は295円に下がって(目減りして)います。

必ず「売り手」にとっての味方となる

セータの最大の特徴は、「時間が経つ」という未来が100%確実にやってくる点です。株価の予想は外れますが、時間は絶対に巻き戻りません。そのため、必ずオプションの売り手の味方(買い手の敵)となります。

💰 オプションの売り手:セータは「日々の利益」

売り手にとって、セータは常に「プラス」に働きます。

相場が上がろうが、下がろうが、横ばいで退屈な展開だろうが、ただカレンダーの日付が進むだけで、セータの分だけ必ずオプションの時間価値は下がります。

そのため、理論上、オプションの売り手にとって構造的な優位性(アドバンテージ)をもたらす要素となります。

❌ オプションの買い手:セータは「命を削る砂時計」

買い手にとって、セータは常に「マイナス」です。 オプションを買った瞬間から、タイムリミット(満期)に向けて時間価値が毎日削られていきます。

そのため、株価が予想通りに「激しく、かつ素早く」動いてくれないと、時間切れで負けてしまいます。

セータは満期日が近くなると加速する!

セータによるオプション価値(プレミアム)の減少スピードは、満期までずっと一定ではありません。ここが最も重要なポイントです。

セータの特徴

まずは横軸を残存日数、縦軸をセータとした場合のグラフの例を以下に示します。

グラフの見方としてはセータの絶対値が大きいほどオプションの価値(時間価値)が1日で大きく下がります。

※権利行使価格、株価、IVなどの条件によってセータは変わりますので、あくまで1日当たりの時間価値減り方イメージというレベルで見てください。

OTM/ITMの場合の例:

ATMの場合の例:

満期まで十分長い: 減少スピードは非常に緩やか

満期までたっぷり時間があるときは「まだ上がる(下がる)かも」と期待が残るため、1日経ったところで、オプションの時間価値はほとんど下がりません。

そのため、セータの絶対値は小さいです。

満期まで45日前後: 減少スピードが徐々に加速し始める

満期が近くなると、「まだ上がる(下がる)かも」という期待が1日ごとに高速で消滅していくため、オプションの時間価値の下がり幅も大きくなります。
※厳密な急加速のタイミングは、権利行使価格と現在の株価とボラティリティによって若干前後します。

そのためセータの絶対値が大きくなり始めます。

満期直前: 減少スピードはマネーネスによって変わる

OTM、ITMの場合:

残存日数がある程度まで下がると、勝率がほぼ0%(OTMの場合)または100%(ITMの場合)になり、そもそもオプションの時間価値が少なくなるため、セータの絶対値は急落します。

ATMの場合:

勝率が50%であり、まだ時間価値がありますが、「まだ上がる(下がる)かも」という期待する日数はほとんどないため、時間価値の暴落スピードがさらに加速します。

セータに則った戦術

このセータに則ると、オプションを売るなら比較的短期、買うなら長期を選ぶのがオプション取引のセオリー(一般的な傾向)とされています。

オプションを売るなら満期まで45日前後が選ばれる理由

前のセクションの通り、満期まで45日前後のオプションは、セータによる時間価値の減少スピードが効率よく加速し始めるタイミングにあたります。そのため、オプションの売り戦略では、この満期まで45日前後のオプションを売るのが一般的とされています。

また、ホイール戦略において、売ったポジションを「満期まで持たずに途中で利益確定する」というのも、セータの特性を活かした代表的なセオリーです。

満期の直前になると、オプションの条件(マネーネス)によっては時間価値そのものがすでに大きく削られており、セータから得られる「毎日の目減り益」が少なくなってしまいます。そのため、効率が悪くなる手前(目安:オプション価格が50%になる)でポジションをクローズ(買戻し)し、次の45日前後のオプションへ乗り換える(ロールオーバーする)戦略が効率がいいとされています。

💡 注意したいポイント

セータの絶対値が最大になるからといって、満期が極端に短く、ATM(アット・ザ・マネー)付近のオプションを売る手法はリスクが高くなります。

株価がわずかに動いただけで大きな損失を被る「デルタ・リスク」が急増するため、一般的なホイール戦略では避ける傾向にあります。(※この内容については、第9回の記事で「デルタ・リスク」として詳しく解説します)

オプションを買うなら数か月先の長期を選ぶ

本ブログのメインテーマであるホイール戦略からは少し外れますが、「もしオプションを買う(株価の変動に備える保険をかける)なら?」という場合のセオリーにも触れておきます。

オプションを買う場合は、セータの崖(減少スピードが急加速するポイント)から遠く離れた、「満期まで数ヶ月以上ある長期オプション」を選ぶのが合理的とされています。

これなら、1日あたりに受けるセータのダメージ(時間価値の目減り)を最小限に抑えつつ、じっくりと株価が予想通りに動くのを待つことができるためです。

逆に、満期が近いオプション(残存日数が少ないオプション)は、1日あたりのセータによる価値の減少が非常に激しくなります。

あっという間に時間価値がゼロに向かって突き進んでしまうため、短期のオプション買いは「よほどピンポイントで急騰・急落のタイミングを当てられる自信があるとき」以外は、避けるのが無難なアプローチとされています。

余談ですが、安定して長期的な上昇が見込まれる銘柄に対して、1年~3年先といった超長期のコールオプション(LEAPS:リープス)を購入して保有する、という投資戦略も存在します。

✍️ ✍️ 今回のまとめ

  • セータ: 1日経過するごとに、自動的に減っていくオプションの価値。
  • 買い手: 時間が敵。満期直前は保有しているだけで日々、価値が目減りするため、激しく素早く株価が動いてほしい。
  • 売り手: 時間は味方になる。株価が動かない場合、時間価値の減少によってプレミアム(オプション価格)の下落が期待できる。
  • ⚠️ 売り手の最大の注意点: 時間が味方だからといって、「満期が極端に短く、現在の株価と約束の価格が同じ(ATM付近)危ないオプション」に手を出すのはハイリスクです。激しく素早く株価が動いてしまうと、時間経過のメリットを吹き飛ばすほどの大きな損失(デルタやガンマの直撃)を被るリスクがあります。
  • 売りのセオリー: セータの加速を狙って45日前後のオプションを売り、セータ効果が薄れる前(目安:オプション価格が50%になる)に利確して、次の45日前後のオプションに乗り換える戦略が一般的。
  • 買いのセオリー: セータによる時間価値の減少ダメージを抑えるため、「数ヶ月先」の長期オプションを選ぶのが合理的とされる。

今回はホイール戦略の味方であるセータについて解説しました。

ホイール戦略では、セータによる時間価値の減少から上手く利益を取っていく必要があるため、セオリーを理解し効率よく利益を取れる立ち回りを意識していくことが大切になります。

🚨 【次回予告】車輪を揺るがす「敵」の正体とは…?

今回は味方であるセータについて解説しました。

オプションの売り手にとってセータは最大の味方になりますが、セータとは対照的にホイール戦略における最大の敵(リスク)となるのが「急激な株価の変動」です。

次回の記事では、そんな「急激な株価の変動」により、オプション価格を暴騰させる指標である「デルタ」と「ガンマ」の仕組みについて解説します。これを知らないと思わぬ大火傷に繋がりかねない重要指標ですので、必ずしっかりと理解しておきましょう!

▼ 次回記事はこちら

【第9回:ホイール戦略のリスク】オプションの価値を加速させる「デルタ」と「ガンマ」の仕組み
本記事ではオプションにおける最重要指標であるデルタとガンマを解説します。本記事を読んでオプション取引の醍醐味である大きな値動きによるリスクとリターンをしっかり理解しましょう。

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ホイール戦略:学習ロードマップ
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本記事では私が使っているウィブル証券(Webull)のMoneybullという仕組みが、米国株オプションの「ホイール戦略」と親和性が高いと感じたため、その特徴と注意点について解説します。

【ご注意】
当ブログで紹介しているホイール戦略やオプション取引は、高いリスクを伴う金融取引です。利益を保証するものではなく、元本を割り込む、またはそれ以上の損失が発生する可能性があります。取引の際はリスクを十分にご理解の上、自己責任で行ってください。

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