7月に入って米国株の決算が本格化してくるシーズンになりました。
ホイール戦略においては、ターゲットバイイング(プットの売り)で引き受けた現物株を持った状態で決算を迎えることはよくあることだと思います。しかし、株価の乱高下リスクがダイレクトに降りかかるため、やはり「怖いイベント」の1つです。
今回は、この頭の痛い決算の跨ぎ方について、オプションの視点から改めて考察してみたいと思います。
決算リスクの落とし方の考え方
オプション的な考え方で言えば、現物株は常にデルタが1であり、株価変動の影響を100%受ける状態です。
したがって、決算時の急変リスクを減らすための本質的なアプローチは、「いかにしてデルタを減らすか(あるいは相殺するか)」という話になります。
決算を跨ぐときのポジションと考察
決算を跨ぐ際のアプローチにはいくつかのパターンがありますが、一般的によく語られるのは以下の5つです。
そのまま決算を跨ぐ(ノーヘッジ)
リスクヘッジを一切せず、株価変動の影響を素直に受けるパターンです。デルタは1のままとなります。
- 向いているケース: 長期的な上昇を見込み、そもそも長期保有を前提としている銘柄。こういった銘柄であれば1度の決算に一喜一憂する必要がないため、この方法が選ばれがちです。
- ホイール目線での評価: 株価低迷時の「塩漬けリスク」が直撃するため、個人的には何らかのヘッジを入れたいと考えてしまいます。
現物株を売る(手じまい)
決算による価格変動リスクを嫌い、事前に現物株を売却する方法です。デルタは0になります。
- ホイール目線での評価: 余計なリスクを回避し、回収した現金で別の銘柄のホイール戦略へ再投資できるため、かなり有効な選択肢だと考えています。
- 悩ましい点: すでに大きな含み損を抱えて塩漬けにしてしまっている銘柄の場合、「ここで損切りすべきか」「決算後の回復に賭けるべきか」の判断に悩まされます。
コールオプションを売る(カバードコール)
ホイール戦略をそのまま続行するパターンです。デルタが相殺される形となりますが、株価が下がるほどデルタが1に近づき、株価が上がるほどデルタが0に近づきます。
- リスクヘッジとしての機能: 決算で株価が急騰してもその恩恵を受けられず、急落した場合はダメージをモロに受けるため、ヘッジとしては全く機能しません。
- ホイール目線での評価: 決算前はIVが高まるためプレミアム自体は稼げますが、株価が横ばいのときしか利益が出ません。大暴騰しても大暴落しても美味しくなく、リスクに対するリターンが見合っていないと感じるため、今回紹介する方法の中では一番良くない方法だと考えています。
プットオプションを買う(プロテクティブ・プット)
長期的な上昇余地を信じて現物は持ちつつ、下落への保険をかけるパターンです。デルタが相殺される形となりますが、株価が下がるほどデルタが0に近づき、株価が上がるほどデルタが1に近づきます。
すでに大きな含み益が出ている長期保有目的のグロース株の決算跨ぎにおいて、含み益の防衛などで使われがちです。
- メリット・デメリット: 下落時の損失を限定できる一方、株価が横ばいや上昇だった場合、支払ったプレミアムは丸々消滅します。また、決算前はIVが高いため保険コストが割高になりがちです。そのため、決算を受けて株価が多少下がったとしても、決算後のIVの低下(ボラティリティ・クラッシュ)によるオプション価値の減少で相殺され、期待したほどヘッジにならなかったという事態も起こり得ます。
- ホイール目線での評価: 「プレミアムを受け取る」のが本業のホイール戦略において、自らプレミアムを支払うこの手法は、少し心理的ハードルが高いと感じます。
コール売り + プット買い(カラー戦略)
3と4を組み合わせるパターンです。
カバードコールで上値の利益を一部放棄する代わりに、そのプレミアムを使ってプットを買い、下落の保険をかけます。
- メリット: 権利行使価格の選び方次第で、コストを減らしたりゼロにしたり調整することも可能です。※ただし一般的にはプット側のプレミアムの方が高いことが多く、決算前がそれがより顕著になるため、コストをゼロにしようとするとコールの上値余地をかなり削ることになる可能性が高いです。
- ホイール目線での評価: 上値が制限される注意点はあるものの、「リスクを限定しつつ、目標株価に達したら手じまいする」というホイールの目的に合致しており、比較的良い方法だと考えています。
余談:合成先物について
売るコールオプションと買うプットオプションの「権利行使価格」と「限月」を完全に一致させると、損益構造は「先物の売り」と同等になります。これを合成先物と言います。
今回のような決算跨ぎで合成先物を作ることは、実質的に「2(現物株の売り)」とほぼ同じ効果を生むことになります。
※細かい話をすると、現物株を担保としたカバードコールなら大きな問題にはなりませんが、ネイキッドのコール売りにより合成先物を作る場合は証拠金の管理が非常に大変なため要注意です。
まとめ
今回は、ホイール戦略における決算の跨ぎ方について5つのアプローチから考察しました。
今回紹介したのは基本的な手法であり、デルタを相殺・コントロールするという観点では、他にも高度なオプションの組み合わせやマクロヘッジといった専門的な手法も存在します。ただ、実際の個人投資家のトレード環境やコストを考慮すると、まずは今回挙げたような実用的な基本の選択肢をしっかり押さえておくのが現実的です。
ホイール戦略の特性や自身の資金効率を考えると、個人的には「2(現物売却)」や「5(カラー戦略)」を軸にしていくのが良いと考えています(個人的には「2」が好みです)が、塩漬け覚悟の長期保有を許容できる状況であったり、既に大きな含み損を抱えていて塩漬けにしてしまっている銘柄であれば、「1(ノーヘッジ)」、「3(カバードコール)」、「4(プロテクティブ・プット)」なども選択肢に入ってきます。
どうやって決算を跨ぐかは正解が一つに決まるものではないため、その時の銘柄の性質やポートフォリオの状況に合わせて、柔軟に判断していきたい所です。
ホイール戦略を体系的に学びたい・実践したい方へ
戦略の全体像を知りたい方はこちら
ホイール戦略を効率よく実践するための知識を、STEP順にまとめた「学習ロードマップ」を作成しました。
[>>ホイール戦略・学習ロードマップをチェックする]

取引を始めるための準備はこちら
ホイール戦略を始めるには、オプション取引が可能な証券口座が必要です。
私が実際に使用しているウィブル証券のメリット・デメリットをまとめました。口座選びの参考にしてください。
※本記事は広告を含みます。投資には元本割れ等のリスクが伴いますので、最終的な判断はご自身で行ってください。
[>>ウィブル証券についてチェックする]

【ご注意】
当ブログで紹介しているホイール戦略やオプション取引は、高いリスクを伴う金融取引です。利益を保証するものではなく、元本を割り込む、またはそれ以上の損失が発生する可能性があります。取引の際はリスクを十分にご理解の上、自己責任で行ってください。

